名義貸しクレジット契約にも顧客免責の余地があるとの最高裁判断
最高裁平成29年2月21日
資金繰りに窮した販売業者に頼まれ、クレジット契約で商品を買ったことにした顧客が、代金を立て替えた信販会社への支払いを拒めるかが争われた訴訟です。
北海道旭川市の呉服店が2008~11年、「ローンを組めない高齢者等の人助けのための契約締結であり、高齢者等との売買契約や商品の引渡しは存在する」と告げたうえで、「支払については責任をもってうちが払うから、絶対に迷惑は掛けない」と顧客に名義貸しを依頼。承諾した34人がつむぎや帯などを買ったことにし、信販会社2社が立て替えた代金を呉服店が運転資金に充てていました。店が分割払いしていたが、途中で破産したため、信販会社2社が34人に残金を請求しました。
割賦販売法は、販売店の説明にうそがあり、顧客側に大きな落ち度がなければ、契約を取り消せると規定しています。裁判では、店との約束が、法律上、契約を取り消せる「業者からのうその告知」にあたるかどうかが争われました。販売業者から「支払いで絶対に迷惑は掛けない」と事実と異なる説明を受けたとはいえ、不適切な名義貸しを承諾した顧客も保護に値するのかという問題です。信販会社は、無効等の事由をもって対抗することは、信義則に反し許されないと主張していました。
一審旭川地裁判決は2社の請求を棄却しましたが、札幌高裁は客の責任を認め、請求通り計約3700万円の支払いを命じていました。
最高裁第3小法廷は21日、「顧客が名義貸しに承諾していても、業者側が重要部分についてうその説明をしていた場合は、支払いが免除される」との初判断を示しました。
最高裁は「名義貸しは不正だが、顧客が背負うリスクの有無などについて業者がうそを告げ、顧客が誤解した場合は保護に値し、契約を取り消せる」と指摘。その理由として、「このような経過で立替払契約が締結されたときは、購入者は販売業者に利用されたとも評価しうる」と述べています。
その上で、顧客敗訴の二審札幌高裁判決を破棄し、審理を差し戻しました。顧客が店の説明をどの程度信用したかや、大きな落ち度がなかったかなどを改めて個別に判断することになります。
もっとも、山崎裁判官は「名義貸しの場合は,そもそも商品購入契約が架空のものであり,かつ,そのことを名義貸人が認識 しているという点で,同法が保護の対象として予定する場合とは著しく状況を異にするのであって,そうした場合をも同様に同法の保護の対象に含めるのは,相当とはいい難い。」と反対意見を示しています。
判決はクレジット契約を巡るトラブルで、消費者の救済可能な対象を広げた判断といえます。