事 案 |
原告らと被告間の本件土地に関する賃貸借契約について,本件土地の公租公課を被告が負担する約定が存在するところ,原告らは,被告がこれに違反したため,契約を解除したと主張して,本件土地上の被告所有の同目録4ないし6記載の建物の収去及び本件土地の明渡し,並びに被告の負担すべき公租公課の支払いを請求している。 |
争 点 |
信頼関係破壊の有無 |
判 旨 |
本件賃貸借契約では,その全賃料につき支払い済みであること,土地購入代金の殆どである約1000万円を被告が負担したとされていること,被告の経営する料亭の存続を前提とする賃貸借契約関係であること,そして,Dを本件土 地の所有者と認めるというのではなく,あえて「真正登記名義人」なる文言を用いていることなど,本件和解の内容に照らすと,当時被告とDの関係は互いの思惑もあって複雑であり,本件和解は,被告とDとの個人的な関係をも考慮し,これを巧みに調整しようとした苦心の結果であることが十分に窺われる。土地の公租公課は,本来土地所有者に課される性質のものであり,所有者とされたDが負担するのが当然のはずであるが,これをあえて被告の負担したことは,文言上被告の債務という形式をとってはいるものの,Dに不利益が及ぶことのないようにとの被告の配慮に基づくものと理解できる。したがって、かかる本件賃貸借契約の特殊性を考慮するときは,その不履行をもって,直ちに被告の背信的行為と評価することはできず,本件解除の有効性を判断するためには,他に信頼関係を破壊するに足りる事情の存在が必要であると解するのが相当である。 |
そこで検討するに,原告らは被告に対し,平成8年4月ころから,度々本件 納税の履行を求めた旨主張する。しかし,原告らが,本件和解,ひいては本件負担合意の存在を知ったのは,本件解除通告の直前である(原告らも自認している。)から,その履行を求めたというのは不可解であり,その主張は採用できない。かえって,前記認定によれば,原告らは,納税義務があるとの自覚をもって,平成7年度の滞納分を含めて以後納税を継続してきたが,利用もできないのに公租公課のみを負担せざるをえない不合理を感じて,本件土地の処分等を模索していたところ,たまたま本件和解中の,本件負担合意の存在を知ったことから,これを奇貨として被告に本件土地からの立ち退きを求めようとしたものと推認される。原告らは,被告が本件和解の存在を原告らに告知せず,そのために原告らは相続税を多く負担する結果となり,また被告は本件土地の所有者であるとの認識をもって原告らに応対したと主張する。確かに,被告にそのような態度があったことは認められるが,前記のとおり本件和解は,被告とDの当時の個人的関係を強く反映していることや,原告らが相続税申告にあたり,本件和解を知っていたとしても,税務当局がこれを借地と評価して課税したか否かは,にわかに判明しないから,被告の態度をもって不当であると断ずることはできない。また原告らは,被告は営業をほぼ廃止しており,平成11年秋ころには,本件土地の一部に侵入して新たに建物を建てたなどと主張するが,これを否定するYの陳述書中の供述(乙8)に照らして採用できない。他に信頼関係を破壊する事情を認めうる証拠はない。 |
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